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著者は1994年の本作品で群像新人賞を受賞。本作品、単行本の刊行は同じく1994年7月。文庫化が2001年。
インディヴィジュアル・プロジェクション、無情の世界、グランド・フィナーレは読んでいたので著者の本を読むのは四冊目。シンセミアは発売当初に上下ともに買ったにもかかわらず積んである。ハードカバーの本は文庫にくらべて持ち歩くのに不便なので後回しになりがち。
この本は文庫本なので、外出時の電車の中――わりと混雑しているときに、本を読むためにドア際の端のスペースをうまく確保して、本を親指と小指で開き、人差し指と中指、薬指でささえ、指をうまく使ってページをめくりながら読む。朝のラッシュ時に一部の人たちがやっている、あれ――で読んでいたにもかかわらず、とこどころに出てくるおもしろい叙述に吹き出しそうになったりもしながら読了。同じ電車に乗り合わせた人には少しあぶない人だと思われたかもしれない。
上にあげた作品名の順番で読んできたので、作者の発表してきた順番と読んできた順番がメチャクチャなのが原因なのか、作風というか文体から受ける印象の違う。しかし、この作品も他の阿部和重の小説と同様に、ある種の安っぽさというかB級っぽさみたなものが感じられた。この作者はその点に関しては一環している感じがするのだがどうだろうか。その一環したある種の安っぽさは、この本を読んでいたときに、必死に吹き出すのを耐えて小刻みに息を震わせる自分の姿が、同じ電車に乗り合わせた人に見られたときに、もしかしたら少しあぶない、少し変わった人と思われたかもしれない、と感じるような分かりやすいイメージみたいな物に起因している感じるがする。
さてさて、積んであるプラスティック・ソウルとシンセミアどっちらから先に読むべきか・・・・・・。
読点を修正2006/1/15 PM 7:11
原著は1988年刊行。『浴室』『ムッシュー』に続く、著者の三作目にして目下のところ代表作らしいこの本、訳者あとがきによると、ロブ=グリエが絶賛したらしいのだが、私には何だか良く分からない作品だった。前二作も私は読んでいるのだが、文体が前とはかなり変わっていて長いセンテンスが多く、会話文も地の文に流し込まれる形になっている。
普段はこれといって何も起こらない、いたって穏やかな暮らしの流れの中で、たまたまある時、二つの事が同時にぼくの身近に起こったのだけれども、ただしそれらの出来事は、個々に考えてみるととりわけどうということのないものんで、かといって一緒に考えてみても、残念ながらそのあいだには何のつながりも認められないのだった。P7 より
日常の些細なことと描写しながら物語らしい物語ではなく、脱線に次ぐ脱線によって進んでいく話、前二作でも同じような主人公ではあったのだが、妙にとぼけた感じがする語り手の「ぼく」の話術とも呼ぶべきような物で構成された作品の読後に、引用した冒頭、まさに書き出しの一行目と作中必要に繰り返される雨の描写がが、妙に印象に残りました。
訳者のあとがきによると、原著が1984年刊行(クンデラはチェコ語で書いたはずなのでチェコ語→仏語訳の年かもしれない)、和訳は1989年集英社ギャラリー「世界の文学」12『ドイツ3・中欧・東欧・イタリア』の巻(1989年)に収録されたのが最初で、単行本が1993年、文庫化が1998年。
私は見ていないのだが映画化もされている。製作年は1987年、製作国はアメリカ。日本では、本の刊行年などを考えると、映画を見てから原作を読んだという人の方がおそらく多そうな感じがする。
永劫回帰という考えは秘密に包まれていて、ニーチェはその考えで、自分以外の哲学者を困惑させた。われわれがすでに一度経験したことが何もかももう一度繰り返され、そしてその繰り返しが際限なく繰り返されるであろうと考えるなんて! いったいこの狂った神話は何をいおうとしているのだろうか?
上記は書き出しの引用で、以後数ページはこのような哲学的(?)な叙述が続き、なんとなく「小説」という言葉からイメージする「小説」からは少し離れた――そういったタイプの作品が私は個人的には嫌いでないけれど――感じではじまり、主人公のトマージュが登場した後も物語の途中で、所々で「私」や「われわれ」といった主語で話者が顔を出し、小説に関してとか、愛についてだとか、タイトルにある「軽さ」と「重さ」の対比だとかが、語られる。物語の主だった舞台になるのはチェコスロバキアのプラハ。 読み込み方次第で様々に読めてしまうので、要約するのが非常に難しい小説なのだけれど、有名な作品であるだけに読後感はよく、ちょっと出過ぎの感もある作者とおぼしき「私」の叙述に嫌悪感を覚えない方ならばおもしろいと感じられるのではないでしょうか。 私は少し「私」が出てきすぎている感じがして、おもしろいけれど……いった感想でしたが。